ひよことおさんぽにでかけよう!

ルキ=私  ルウ=4歳の娘  チャーリー=旦那様  楽しく子育て奮闘中!

プライド

私は子どもの頃、よく迷子になった。
母の買い物の後をついていき、ふと気を取られて足を止めたが最後、必ず母を見失っていた。
走って追いかけて、何の根拠もなく「母はここを曲がっただろう」と思い、私も曲がる。
それで発見できればラッキーだが、5回に1〜2回は発見できない。

振り返る。
…いない。
また走る。
…いない。
またまた何の根拠もなく曲がる。
…いない。
そこでようやく自分が迷子になったと思う。

急激に不安がこみ上げる。
泣きそうだ。
私はすぐに涙が出ちゃう子どもだったのだ。

でも、迷子になった時だけは必死で涙を我慢した。
「私は迷子です」なんて態度に出すのは、恥ずかしくて絶対にいやだったのだ。
だから商品を探しているふりをしながら、母を探した。
通路の一本一本を覗き込みながら、棚をチェックしているふりをして母を探した。
端から端まで探したけれど、母は見つからない。
当たり前だ、母も私を探して歩き回っているのだから。


「迷子になったらお店の人に言うのよ」
と母が言ってたっけ。
通りがかったお店の人は、挙動不審の私をじっと見ている。
通り過ぎても振り返って見ているようだ。

「私は迷子なんかじゃありません!」
私は近くの棚にあった商品を手に取って、
  「え〜〜と、これじゃないなぁ」
とつぶやいてみる。
私の目からは今にも涙が落ちそうなのに。


遠くで母の声がしたような気がする。
  「ゆきちゃ〜ん! ゆき〜〜っ?」
確かに母が呼んでいる。
  「お母さーん!」
太い通路に走り出て、母を探す。
  「ゆき〜?」
近くにいる!
いくらキョロキョロしても母の姿は見えない。
  「お母さーん!!!!」
なかなか現れない母
  「お〜か〜あ〜さ〜ん?」
  「………」
とうとう声もしなくなった。
  「をがあざ〜〜〜ん〜〜!」
もう迷子の子ども丸出しで、目からはゴーゴー涙が溢れ、鼻からは鼻水が流れ……

すると、思ってもいない方向からポンッと肩を叩かれる。
  「もう!どこ行ってたの! 探したわよ」
母が笑っている。
急に鼻の頭が熱くなって、またポロポロと涙がこぼれる。
泣いて充血してパンパンになった顔で、私は手を引かれて歩き出す。
ホッとして、嬉しくって、母が怒っているか気になりながら、母の顔を見上げてみる。
母もホッとした顔をしている。
私はしゃくりあげながら、温かい母の手をギュッと掴んでいる。
「私は迷子になってました」という顔をしていたと思う。