ひよことおさんぽにでかけよう!

ルキ=私  ルウ=4歳の娘  チャーリー=旦那様  楽しく子育て奮闘中!

父の声

父の声
  「メーコ! メーコ! ……ゆき、お母さん呼んで」

リアルに思い出せる父の声。
「お母さん呼んで」と言われて、私はどうしていたのか思い出せない。
多分、母を呼んだんだろう。
でも最近は頭の中で、父と会話してみる。

  「どうしたの?」
  「水」
  「も〜!自分で持ってくればいいのにィ(笑)! しかもわざわざお母さんじゃなくてもいいじゃん、私が傍にいるんだから。待ってね、持ってくるね。」

私は、こんなこと、言ったことなかった。
水を持ってくるくらいのことなら、ムッツリ黙ってハイ、どうぞ、だった気がする。
でも妄想の会話なので、あえて色々言ってみることにした。
もしかしたら、今まで聞いたことのない父の声が聞こえるかもしれないと思ったからだ。


  「ゆき、お母さん呼んで」
  「どうしたの?」
  「これ(薬の包みを捨てるとこがない)」
  「お母さんが持って行っちゃったのかな? 今日ゴミの日?」
  「………」
分からないらしい。


  「ゆき、お母さん呼んで」
  「なんで?」
  「首が寒いんだよ」
  「じゃあ、なんか持ってこようか。いつもどうしてるの?」
  「………」
  「枕元にネックウォーマーがあったけど、持ってくる?」
  「………」
ちょっと考えて頷く父。
妄想の中の父はなかなか答えてくれない。


なかなか答えてくれないのは、父が寡黙だったからだけじゃない。
きっと、私が父とあまり会話を楽しんでこなかったからだ。

  後悔しても遅いよね。

私は妄想の中で父に呼びかける。
今まで言ったことのない言葉で父に話しかける。
いつか父の違う声が聞こえるだろうか。