父の思い出 3
寡黙で、喋る事に関しては不器用だった父。
私との会話で盛り上がったのは、中学の時の宇宙の話だけだったのかもしれない。
だって、父の話はいつも突然。
母が家事などで席を外していて、部屋に私と2人だけの時に、
「ゆきは、お芝居だけで食べていけると思ってるのか?」
って、いきなりですよ。
私が悩みを相談したとか、その話になる切っ掛けがあったとか、何にも無くです。
父はいつも即答できない問題ばかりをテーマに話しかけてきた。
「ゆきは、結婚する気はないのか?」
父親として、心配なことを聞いているのはわかる。
けれど、もう少し私が話しやすい環境を整えてくれても良さそうなものだ。
いきなり核心を突かれても、それまでの経緯とか、私の思いとか、私の考えとか、説明したり理解してもらったりとか、そんな段取りを踏んでくれても良いものを……
結局私はムッツリ黙り込んで「答えたくない」意思表示をする事になってしまう。
私ももっと大人になって、父の考えや父の思いを聞き出してもよかったと思う。
自分の思いを理解してもらえない怒りばかりが先にたっていたけれど、父の考えを聞きながら、私もそう思うとか、私はこう思うとか、そんなところから話しなおしたってよかったのに……
父が何を思っていたのか……私は聞き損ねてしまったんだね。