大きな人
前に、ダリンの白い靴を革専用の塗料で黒く染めた。
というのも、ダリンは仕事で黒い靴を履く機会が多く、白はめったに履くチャンスがない。
しかも仕事先では靴の脱ぎ履きが多く、走り回ることもあるので、すぐヨレヨレになってしまうから、黒い靴ならいくらでもあって良いと思ったのだ。
失敗してはいけないと、説明書をよく読み、丁寧に一気に塗り上げたのだが……
塗りムラが出来てしまい、思ったようにならなかった。
よく乾かした後、数日経ってから、もう一度塗ってみた。
今度はコツが掴めて上手くいったように思えた。
でも乾かしてみると、やはり塗った筆の跡がついてしまっていて、とても外には履いていけない感じだった。
どうしよう……
説明書には、仕上げに黒い靴墨を塗ると書いてあるけれど、靴墨を塗ってしまったら、もう塗料の再チャレンジはできない。
かと言って、再チャレンジしてもまた同じようにムラになりそうな気がする。
どうしよう……
迷っているうちに、月日が経ってしまった。
ところが一昨日、私がチビタンのお昼寝をさせている時に、ダリンがそのムラになった靴を発見してしまった。
私が起きていくと、ダリンはニッコリ笑って言った。
ダ「靴、染めてくれたんだね。ありがとう!」
私はハッとしてダリンを見た。
私「あの…ごめんね。塗ったんだけど、ムラになっちゃったの」
ダ「上から靴墨塗ったら大丈夫だったよ」
私「でも…靴紐、白いから、黒に替えなきゃ…」
ダ「衣装で使うのに、白い紐がピッタリなんだ」
私「でも…よく見ると、塗った跡が見えるし…」
ダ「そんな近くで手にとって見る人いないから大丈夫だよ」
未完の失敗作なのに…ダリンの思わぬ優しい言葉。
最後まで仕上げてなかったのに、ダリンが靴墨塗ってくれたんだね。
ダリンが言うように、手に取らなければ分からないくらい、塗りムラは消えて綺麗になっていた。
本当は、ピカピカの新品みたいになった黒い靴を渡してびっくりさせたかったんだけど、
逆にダリンにびっくりさせられちゃったよ。
ありがとう、ダリン。